「その①」では、商品ごとの原価を計算し、売上高から原価を差し引いた売上総利益を、その商品が持つ最初のHP(ヒットポイント)として捉えました。

「その②」では、販売価格や値引きによって、販売した時点ですでにHPが大きく削られていないかを確認します。

しかし、商品の本当の利益を知るためには、さらにその先を見る必要があります。

商品を売るために使った費用です。

広告宣伝費、販売促進費、物流費、販売手数料、営業活動にかかった費用。

これらを差し引いたあとに残るものが、その商品の本当の利益です。

売上総利益は、販売に使える費用の原資

商品を販売して得られる売上総利益には限りがあります。

売上高から原価を差し引いて残ったHPより多くの販売費を使えば、その商品は赤字になります。

考え方はとても単純です。

ところが実際には、広告宣伝費は広告宣伝費、物流費は物流費として、商品別の利益とは切り離して管理されている会社が少なくありません。

その結果、どの商品に、いくらの費用を使い、最終的にどれだけ利益が残ったのかが分からなくなります。

会社全体の広告費が分かっていても、それだけでは広告が利益へ貢献したかどうかを判断できません。

人気商品だから、利益が出ているとは限らない

よく売れている商品には、さらに販売を伸ばそうとして多くの費用が使われます。

広告を増やす。

キャンペーンを行う。

値引きをする。

送料無料にする。

特典を付ける。

しかし、その商品に十分なHPが残っているかを確認しなければなりません。

もともとの販売価格が低く、さらに値引きでHPの大部分が削られていたら、その商品は売れた時点ですでに瀕死です。

そこへ広告費や販売促進費という斬撃を加えれば、簡単にHPはゼロを下回ります。

売上は増えている。

販売数量も多い。

お客様にも人気がある。

それでも、売れば売るほど利益を失っている。

そんな商品が会社のエースになっているかもしれません。

あの「カール」でさえ、東日本から消えた

売上が大きい商品や、知名度の高い商品が、必ずしも利益を生む商品とは限りません。

象徴的なのが、明治のロングセラー商品「カール」です。

私もカールは大好物でした。

それでも明治は2017年、東日本での販売を終了し、生産拠点や商品数を絞って、西日本限定で販売を続ける判断をしました。

地域別の利益は公表されていませんが、人気だけでは全国販売を維持できなかったことは確かです。

商品別、地域別に、原価や物流費、販売費まで差し引いてみると、見えてくる景色は変わります。

本当のエース商品とは、最も売れた商品ではありません。

会社に最も多くの利益を残した商品です。

費用を使うことが悪いわけではない

広告宣伝費や販売促進費を削減すればよい、という話ではありません。

将来の売上を増やすための広告があります。

新しい市場を開拓するための販促活動があります。

商品の認知度を高め、ブランドを育てるために必要な投資もあります。

重要なのは、費用を使わないことではありません。

何のために、どの商品へ、どれだけ使い、その結果としてどれだけ利益が増えたのかを確認することです。

正しく使えば、販売費は将来の利益を増やす投資になります。

しかし、効果を確認せずに使い続ければ、利益を失う原因になります。

商品ごとに「使える費用」を考える

商品ごとの残りHPが分かれば、その商品の販売にどれだけの費用を使えるかを判断できます。

十分なHPを持つ商品であれば、広告や販売促進へ積極的に投資できるかもしれません。

一方、残りHPが少ない商品では、費用を追加する前に、販売価格や値引き、原価を見直す必要があります。

すべての商品へ同じように販売費をかけるのではなく、残りHPに応じて判断します。

広告投資を増やす商品。

値引きを制限する商品。

販売促進の方法を見直す商品。

物流費や販売手数料を見直す商品。

販売地域や販売方法を再検討する商品。

商品ごとの残りHPは、販売費を正しく配分するための判断基準になります。

広告の成果を売上だけで判断しない

広告や販売促進の成果は、売上高や販売数量だけで評価されがちです。

しかし、売上が増えたからといって、利益も増えたとは限りません。

大幅な値引きで販売数量が増えた。

高額な広告費で売上が増えた。

送料無料によって注文数が増えた。

こうした施策も、最後に利益が残らなければ、会社の成長にはつながりません。

確認すべきなのは、

「広告によって、いくら売れたか」

だけではありません。

広告に使った費用以上に、利益が増えたか。

この視点が必要です。

売上ではなく「残りHP」でエース商品を決める

多くの会社では、最も売上高が大きい商品や、販売数量が多い商品をエース商品と考えます。

しかし、本当のエース商品は、売上が最も大きい商品ではありません。

会社に多くの利益を残した商品です。

売上高では1位でも、値引きや広告費、物流費を差し引くと、利益がほとんど残っていない商品があります。

反対に、売上規模はそれほど大きくなくても、値引きが少なく、販売費も抑えられ、大きな利益を残している商品があります。

売上ランキングと利益ランキングは、必ずしも一致しません。

だからこそ、商品ごとの残りHPを見る必要があります。

新しい売上をつくる前に、利益の流出を止める

利益改善というと、新たな売上を増やす施策へ目が向きます。

新商品を開発する。

新規顧客を獲得する。

広告を増やす。

営業担当者を増やす。

しかし、その前に確認すべきことがあります。

すでに販売している商品の中で、失わなくてもよい利益を失っていないでしょうか。

必要以上の値引き。

効果を確認していない広告宣伝費。

慣例で続けている販売促進。

利益を超えた送料無料や特典。

こうした利益の流出を止めることは、新しい売上をつくるよりも、早く利益改善につながる可能性があります。

新たな利益をつくる前に、今ある利益を守る。

これが収益コントロールの重要な考え方です。

まとめ

商品の本当の利益は、売上高から原価を差し引いただけでは分かりません。

販売価格や値引きによって残ったHPから、さらに広告宣伝費、販売促進費、物流費、販売手数料などを差し引く必要があります。

人気商品だからといって、無条件に値引きや広告投資を増やしてはいけません。

値引きによってすでに瀕死になっている商品へ、さらに販売費という追い打ちをかければ、売れば売るほど利益を失うことになります。

重要なのは、商品ごとの残りHPを把握し、その範囲内で販売費をコントロールすることです。

そして、残りHPをすべて使い切るのではなく、会社に利益を残し、次の成長へ投資するための余力を確保しなければなりません。

売上を増やす前に、失っている利益を食い止める。

売上ランキングではなく、残りHPで本当のエース商品を見つける。

私たちは、これこそが商品別の収益コントロールにおける、最も重要な考え方だと考えています。